人間

 アメリカのニューヨーク科学博物館には、「地上で最も凶暴な動物」と表示された陳列物が置いてあるといいます。なんとそこに飾られているのは鏡。したがって地上で最も凶暴な動物とは、鏡の前に立った自分自身、つまり人間ということになります。

 どんなに凶暴なライオンでも、空腹の時以外は他の動物を襲わないといいます。それも必要量だけ。でも人間は違います。欲やメンツ、自分のイライラや怒りといった感情、時には面白半分で人を殺す人間さえいます。人類滅亡の核爆弾を持っているのも人間です。

 考えてみると、人間ほど凶暴・凶悪で恐ろしい生き物は世の中にいないのです。

 特に最近の事件や犯罪をみると、最も信じられるはずの親と子、夫婦、友人といった人間関係すら信じられなくなる、そんな事件が多くなりました。動物以下の人間、それが私たちの姿なのです。

 関白太閤殿下となった豊臣秀吉が、トンチで有名な曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)に「この世で一番恐ろしいものは何か」と尋ねました。新左衛門は即座に「人間です」と答えた。権謀術数(けんぼうじゅっすう)の戦乱の世を生き抜いた秀吉。その答えに深くうなずきました。
 続いて秀吉は「この世で一番いとおしいものは何か」と尋ねました。しばらくじっと考えていた新左衛門の答えは「やはり人間です」というものでした。
 この答えに秀吉は深くうなずいたといいます。

 今も昔も、そして洋の東西に関係なく、世の中で一番恐ろしく、それでいて世の中で一番いとおしいものは人間なのです。

 日蓮聖人は「霊山(りょうぜん)に近づく鳥は金色になる」と教えられました。霊山浄土に近づくと、鳥の羽が自然に金色になるというのです。私たち人間も同じです。触れる縁で、鬼にも仏にも変わるのです。できるだけ良い縁に触れるようにしたいものです。

(平成18年7月15〜31日 テレホン説教)

 

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