雨にも

 宮沢賢治の「雨にも負けず」の詩。その出だしの「雨にも負けず、風にも負けず、雪にも、夏の暑さにも負けぬ丈夫な体を持ち」の一節。これまで何気なく読んでいましたが、良く考えると実に味わい深い言葉です。

 雨や風、雪や夏の暑さといったものは自然の現象です。もちろん雨には傘、暑さにはエアコン、雪には除雪機といった対処法があるとはいえ、科学が進んだ現代でも、まだまだ私たち人間は自然の力にはかないません。

 このかなわない自然の現象にブーブー文句をいう人がいます。文句をいったからといって気象が変わるわけでなく、ただ自分の感情を発散し、そのために周りの人を不愉快にする。そんな愚かな人間にならないために、賢治は「丈夫な体を持ち」たいと願ったのでしょう。世の中には何かにつけてブツブツ文句ばかり言う人がいるものです。仕事がきつい、上司が悪い、給料が安い、朝が早い等など。お釈迦さまはそんな人に対して次のような話をされました。大きな川は、決して川音を立てずに滔々と静かに流れる。反対に小さな川ほどうるさい音を立てるもの。また強い犬はよほどのことがないと吠えないが、弱い犬はキャンキャンとうるさく吠えるもの。人間も同じで、小さい人間、弱い人間ほど、暑い寒い、好きだ嫌いだ、忙しい疲れたなどと騒ぐもの。大きな人間、強い人間になりなさい、と説かれました。

 「三界は安きことなし、なお火宅のごとし」と言い、しかも「常に生老病死の憂患あり」と法華経に説かれる私たちの人生。私たちが生きている限り、いろんな問題や悩みはつきものなのです。

 賢治の言った「雨にも負けず」は、単に自然現象の雨や風ではなく、私たちの人生の雨や風に負けない、大きな強い人間になろうよという、私たちへの応援の言葉だったのではないでしょうか。

(平成18年9月1〜15日 テレホン説教)

 

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