「偽」から「正」の社会へ

 新年明けましておめでとうございます。今年が皆さんにとって最良の年でありますよう心よりお祈り申し上げます。

 平成十九年の流行語大賞は、東国原宮崎県知事の「どげんかせんといかん」と、ゴルフの石川遼君の「ハニカミ王子」が選ばれたそうです。テレビの画面を賑わした二人。なるほどなあと思いました。

 一方、日本漢字検定協会が行っているその一年を象徴する漢字に、昨年は「偽」という漢字が選ばれました。毎年、大きな色紙にその文字を書く清水寺の管長さんが「こんな文字が選ばれるとは!」と嘆きながらのシーンが印象的でした。ちなみに「偽」の次に選ばれたのは「食」、続いて「嘘・疑・謝・変・政・乱」という順でした。

 昨年は比内地鶏の偽装表示にはじまり、お菓子の赤福や白い恋人、そして老舗吉兆までが看板に「偽」りの食品を売っていたという、不正・偽装事件がたて続けに起きました。まさに「偽」と「嘘」が世を覆い、特に「食」の安全に対して人々が強い不安や不信の「疑」を感じた年でした。そしてその不正行為がバレると、途端に会社の重役や偉い人が平身低頭して「謝(あやま)」るという、実にみっともない一年でもありました。

 「政」治の世界でも、衆参両院の勢力が逆転するという「変」な状況になり、日本という国も私たちの生活も、不安定不透明な混「乱」した社会状況に。そんな日本の現状や私たちの気持ちを、たった一字の漢字で実によく表現していると感心します。

 日蓮聖人は「世末になれば人の智はあさく仏教はふかくなる事なり」(『報恩抄』)と述べられました。最近の世の中はまさに「世も末」と思うようなことばかりです。どんなに時代が変わっても、悪いことをしてはいけないし、悪いことはいつかは見つかり、そして悪いことをしたら罰せられるというのは当然の「道理」。そんな子供でも知っている「道理」のわからない人を、日蓮聖人は「智」の浅い人といったのです。会社の利益のために「偽」や「嘘」に走り、その挙げ句に「謝」という結果に。実に「智」の浅い、愚かな人たちではないでしょうか?

 幸せや繁栄は「偽」や「嘘」ではなく、「正」から生まれるもの。日蓮宗では昨年より『立正安国・お題目結縁運動』という宗門運動を実動しました。「立正」とは正しい心、正しい思想、正しい信仰で生きることです。「どげんかせんといかん」情けない世の中です。それだけに平成二十年の今年の漢字に「正」の文字が選ばれるように、毎日の生活や仕事、そして信仰を「立正」の心で過ごそうではありませんか。

(平成19年1月 青森県宗務所HPに寄稿)

 

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